構成
chapter01 ファシリテーション − 変革リーダーのコアスキル
chapter02 議論の大きな骨格をつかむ
chapter03 参加者の状況を把握する
chapter04 「論点」を広く洗い出し、絞り、深める
chapter05 合意形成・問題解決のステップでファシリテーションを実践する
chapter06 発言を引き出し、理解する
chapter07 発言を深く理解する
chapter08 議論を方向づけ、結論づける
chapter09 対立をマネジメントする
chapter10 感情に働きかける
chapter11 ファシリテーションは「合気道」
メモ
本書は、課長や部長など上司の立場の人間が、部下たちに意欲的に会議へ参加してもらいたいといった場合における、リーダーとしてのスキルを説明している。
目指す像:ファシリテーター型リーダー
- ファシリテーションは単なる会議進行の技法ではなく、リーダーの必須スキル
- メンバーが考えるべき重要な「問い」を提示し、メンバーの思考投入量を最大化し、知恵と意欲を引き出す
ファシリテーションとは
メンバーの腹落ち感を作るための核となる、コミュニケーションの営み
「腹落ち」とは
「目的と理由」を深く理解し、「具体的なあるべき姿」を自ら描き、「ワクワク感や当事者意識」を持てるレベルで納得すること。
- 経営層など上位の方針や目的を、理由や背景とともに具体的に理解する
- 上位の目的を理解して初めて、現場で具体的判断ができる
- そのために自分のあるべき姿を具体的にする
- 自分がやりたいと思えるようにする
議論をする理由
アクション(行動)に向けた合意の形成
- 決定内容の合理性向上
- 考え方をぶつけて、優れたアイディアを生み出す
- 決定プロセスの納得性を高める
- 様々なトレードオフがある中で何故そうしなければならないのか。腹落ち感
出発点と到達点を明確化する
- 何を中心に議論すべきなのか
- 各論点にどの程度時間をかけるのか
- 結果それぞれの発言をどう位置づけ、どう反応すべきかを判断する
会議を行う理由が明確になると、腹落ち感も向上する。
ファシリテーターは演出家
- なかなか発言しづらい人、もしくは立場上不利な意見を言わざるを得ない人を把握しておいて、その人が発言できる流れを考える。
「私はB部長の意見をこう受け取ったのですが、実際に実行されるAさんからするとそれで大丈夫ですか?」
(もしAさんが反論を述べてそれにB部長が反発を覚えても、いざとなればファシリテーターのまとめ方のせいにできる振り方)
- 放っておいても話す人はむしろ逆を考える。
メンバー全員が議論に参加している状態を作り、誰も「聞くだけのその他大勢」にならないように努力する。
論点とは
- 「その主張や意見は、どういった問いに答えているのか」
- 「どんなポイントについて考えた結果、導かれたものなのか」
ということ。
論点の洗い出し
議論されるテーマ自体から、その問いの答えを出すにあたって判断を左右するポイントを洗い出す。 階層化ができたら、議論すべき論点とそうでない論点の峻別し、絞り込む。 議論の最初のポイントは、その論点についての議論は議論のゴールに至る上で、合意形成の必要があるかどうか。
# 論点の階層化例) 我がチームは〇〇選手を獲得すべきか? - 獲得したい選手か? - 能力は高いか - テクニックはあるか - 体力はあるか - 人気はあるか - ファンサービスを行なっているか - 我がチームは獲得できるのか? - 希望年俸は払えるのか - 在京チーム志望ではないか
論点の把握とコントロールが難しい
参加者が論点を明確に意識し、正しく共有した状態で議論が進むことはそう多くない。
ファシリテーターはそんな状況下で適切に進行することが求められる。
(💭とても共感した)
何が問題かを洗い出す。
最初は why ではなく where
- 人がどんどん辞めている。
- それってそもそも問題なのか
- 即時補充できないことが問題なのか
- 長期間勤めてくれないことが問題なのか
ファシリテーターが問題について当事者意識を強く持ち、多くの論点や切り口、仮説を持つ必要。 答えはメンバーに出して貰えば良いので、ファシリテーターが全て用意する必要は無い。
where がでたら why
- いろんな視点、立場からたくさん意見を出してもらう
- そこからどれが最も影響が大きいか、有ると無いとで差が出るか、と絞り込んでいく。
- ファシリテーターは、議論で出てくる意見に漏れや偏りがないかを判断するスピードを上げるために、そのテーマに関する因果関係を推定した上で、仮説を持っておく必要がある。
アクションを選択するフェーズ
まずオプション(出された選択肢)を評価する基準について合意する必要がある (ex. 効果の大きさ、スピード、工数、コストなど何をもって決めるか)
「いつ、誰が、何をするのか」を具体化し認識を揃える。 (💭 当たり前にも感じられるが、欠如しがちらしい)
- アウトプット(行動)イメージを明確に
調整の仕方を決めておく
どれだけ具体的にプランニングしても、作業に着手すると遅延や調整すべき点は出る。 要協議・決定事項が生じた際に、「誰がいつどのように決めるのか」を合意しておく
発言を引き出す
- なぜこの議論の場が設けられているのかを伝える
- なぜこのメンバーが呼ばれているのかを伝える
- 「〜〜な立場からの意見が欲しい」と振ってみる
- 賛成に傾いているときは反対の意見を聞く
など。 ファシリテーターが以上を意識することから生まれる「本当に聴きたいという姿勢」 人間は自分の話を聞いてくれる・理解しようとしてくれる人の方が話をしたいと感じるもの
発言者の発言目的を理解する
発言には論理的目的だけでなく心理的・感情的側面の目的もある。 (自分の存在をアピールしたい、喜びや悲しみ・怒りを理解されたいなど) ここに目を向けることで、真意を掴みやすくなる
相手の論理を完成させることを考える。
- 例えば「アメリカと日本の消費者の嗜好は似ている」という前提の上で 「このサービスはアメリカで成功したから日本でも成功する」という論理であっても、 発言者がその前提を当たり前だと思っていて説明を飛ばしてしまうことも多い。
- 前提を飛ばしているかもしれないということがわかっていると、 「それだけでそう言えるでしょうか?状況が異なれば同様に成功するとは限りません」 といった正しい結論を導く問いかけができる。
- 対立する意見があったときに、
相手の主張が理解できないのは何故か
、合意形成のために何の確認が必要なのか
、論理のどの部分に合意が必要なのか
といった点を具体的にして、議論が進むよう促すことが必要。
ファシリテーターはこのような話の聞き方が必要。 揚げ足を取るとか批判をするのではなく、正しい意思決定のためにあるべき論理を追求したいという態度。
議論を方向づける
ファシリテーターが議論すべきと思っている論点が話題に出ると、反射的に自分の意見を述べたりして、メンバーの発言機会を奪ってしまうことがある。 活発に発言している状態であれば、ファシリテーターは参加者が自由に発言できる空気を保つためにSTAYが良さそう。
①広げる
話の広げ方のワーディングに注意
言葉選びを誤ると、メンバーの思考を意図しない方向へ誘導してしまう
- 論点を広げる(論点を示した上で、他に論点があるか?)
- 意見を広げる(論点を示した上で、反対もしくは別の主張を求める)
- 根拠を広げる(論点と結論を示した上で、別の理由づけを求める)
- 情報を広げる(前の情報を位置付けた上で、5W1H などの軸を使って、具体的情報を引き出す)
②深める
- どの論点には合意ができていて、何について対立があるのかを整理し、考えるべきことを絞り込んでいく作業。
- 議論をする目的をメンバーと共有し、討論の勝ち負けでなく、本来の目的に沿った姿勢でメンバーが議論に臨めるように働きかける。
③止める
議論を効率的に進めて、メンバーの集中力を維持するために以下を実施
- 今議論すべきでない論点(現状持ちうる情報では十分な検討ができない、上位の者に相談確認が必要など)を切り上げて本来議論すべき論点へ戻す。
- メンバーが「止められた」ことへに負の感情を抱かないよう細心の配慮をする。
- 説得ではなく問いかける。
「XX という論点について 〜〜 という意見ですね」 「XX という論点について結論を出すためには、〜〜 という論点について考える必要がありそうですね。」 「では 〇〇 という論点についてはどう思いますか」
などと自然な修正を試みる。
- なかなか動かない場合は「今ここで 〜〜 という論点の結論を出すべきと思われる理由は何でしょうか」など。
その議論を止める必要性を相手に気づいてもらうというスタンス。 今議論すべきでない論点への対応は、まず発言者の意見を論点に転換し、明確にすることからスタート。
④まとめる・結論づける
行動につなげる。決まったことと決まっていないことを峻別して示し、そして誰がいつまでに何をするのかを明確に表現して、メンバーに確認する。
議論がまとまらなかった時
- どんな論点に関してどこまで結論が出たのか
- 合意と行動に至るために残された課題は何か
を明らかにした上で、「残された課題を解決し、次回合意に至るためにはどうなれば良いのか?」を明確にした「条件付き合意」を形成する
ステップは次の通り
- 合意できた論点と結論を確認する
- 合意できていない論点を確認する
- 合意できていない論点について、さらに論点を細分化し、どの部分は合意できていて、どこが合意てできていないかを確認・共有する
- 合意できていない論点について合意するために、どんな条件が揃えば良いのかを考え、確認する
- 合意に必要な条件を満たすための検討(上司や特定部門への検討実施、懸念点への対応可否検討、情報収集など調査の実行など)を依頼し、次回もしくは条件が明らかになった時点で報告してもらうよう依頼する
対立のマネジメント
対立が発生する主な理由は、
- 触れる情報の違い
- 情報の解釈の違い
- 判断基準の違い(優先順位。ex. 顧客対応スピードか、生産効率かコストか)
合意可能なレベルまでその業務の目的やあるべき姿を遡り、段階的に合意をつくっていく。 (ex. 営業・生産はそもそも何のためにやっているのか、より上位の方針上、今は何が重要なのかを問いかける)
感情の重要性
- 発言したいと感じさせる自由かつ創造的雰囲気、
- 多くの意見が多くのメンバーから出て、スピーディに議論が進む活発な空気
- そして自分が馬の一員として他のメンバーから受け入れられ、自分の発言が価値あるものとして受け取られるという安心感
安心感
- 相手の目を見て話を聞く
- 名前を呼ぶ
- 考え発言するのに時間的余裕を与える
- 出た発言をまずしっかり受け止め
- 内容の是非に関わらず、発言への感謝と共感を示す
といった振る舞いを心がける
感想
立場が異なると優先する価値判断が異なるといったような忘れがちな前提の話から、話の振り方の具体例など細かいところまで言語化された説明がなされていて、とてもわかりやすかったです。
大きなポイントとして、ビジネスにおける議論の目的は「行動の決定」であることを再認識できました。
また、自分がメンバーの時にメンバーの役割を果たすようにしたいと思いました。
どういう発言や行動が求められて、自分がこの議論の場に呼ばれているのかを意識したいです。
さらに、ファシリテーターが論点や方向を見失っているかもしれないと感じた時に、それを思い出させるといった、補佐するような役割もできたら尚よさそうだと感じました。
(文中でも、ファシリテーターは「今この議論を続けるべきか」「他の論点に移るべきか」「意見を述べたそうにしている人はいないか」等々非常にいろんなことを考えていて、キャパシティがほとんど残っていないことも多いとあった)
「今って〜〜の話でしたっけ」みたいな確認程度でも、ファシリテーターやメンバーに気づきのキッカケを与えられたりしそうだと思いました。
今回は上司としてのリーダーが参加者である部下をまとめることが主な事例で、今の自分の立場やスタンスとはやや異なる部分もあったので、 ぜひ他のファシリテーションの書籍も読んでみたい。